社葬は経費になり、結婚費用は祝い金としてなら認められる

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社葬は経費になり、結婚費用は祝い金としてなら認められる
 慶弔に関することは、税務上、意外に大自にみられているようではあるが、どちらかというと、 「弔」のほうにウェイトが多くかかっている。会社のために功績の大きかった役員の死亡に際し て、社葬をしたりすることがよくある。

 三国興業株式会社は、製鉄会社の特約販売腐として、同業者を一歩リードする位置にあった。 資本金五百万円で、現社長三田郁夫(五十八歳〉が一人で始めてここまで発展させたのである。専 務の後藤正雄(六十三歳)は、十八年前に取引先から頼まれて入れたのだが、抜群の働きで、会社 にとってはなくてはならぬ人となっていた。

 この後藤専務が突如として心臓発作のため、仕事中に倒れ、救急車も間にあわず他界したので ある。会社にとって、かけがえのない人を亡くし、三回社長の悲嘆振りは自にあまるものがあっ た。

 遺族に対して彼は、葬儀一切は会社でやらせて欲しいと申しでて、その承諾を得られるや、取 締役会を緊急に聞き、葬儀を社葬とすること、費用は少なくとも二百万円ぐらいかかるだろう が、一切これを会社が負担する決議をした。そして、通夜から斎場での葬儀まで、全部会社の総務課が主管し、滞りなく終わった。

 費用はしめて二百十二万八千円。全額を会社の経費にした。よその会社にこういう場合の経費 の取扱いを聞いてみたが、会社に対して相当の貢献があったものの場合、税務当局もうるさくい わないという。

 それから半年のちに、大学を出て会社の営業課で働いている息子の伸彦(二十七歳)が、取引先 の部長の娘と結婚することになった。見合結婚なので、両家の親同士と仲人役の取引先の常務取 締役の聞で、式場その他一切の手配が進められた。結婚式と披露宴ともにK記念館で行われるこ ととなった。

 客数も多く、なんだかんだとその費用が五百万円近くかかった。三回社長はこちらが嫁をもら う立場だからと、その七割を負担することにした。そこで思いついたのは、後藤専務が亡くなっ たときには、社葬ということで、その費用を全額会社が負担したのだから、こんどは社長の長男 の結婚式も「社婚」ということで、三田社長個人が負担すべき費用約三百五十万円を全額会社の 負担にすることである。

 「弔」と「慶」とは裏表の関係にあるが、結婚式の費用は社葬の費用とはちがうのである。両家 の親か本人同士が負担するのが常識である。では祝い金として包んだらどうか。会社の内規によ とむら る祝い金なら経費としてだせることになる。死者を弔うこととは、本質的に違うからである。