贈与税の基礎控除をうまく生かそう

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贈与税の基礎控除をうまく生かそう
私たちはいくらかでも財産があると、自分が死んだとき妻や子供が相続税で苦労するのはかわいそうだと思います。そこで、生きている間に財産をわけてやろうと考えます。ところが、行く手には恐るべき高額の贈与税が待っています。そこで、うまい手があります。

 贈与税は天下の悪税といわれます。それは、その税率があまりにも高いからなのです。一千万円の財産を親からもらい、その年中には、この他になんの財産贈与も受けなかったとすると、いくらの贈与税がかかるのでしょう。三百八十七万五千円です。

 かりにこれが全部現金か銀行預金での贈与だったとすると、六百十二万五千円しか手許に残りません。実に四Oパーセント近くが贈与税として、政府に召し上げられます。こういうひどい税金があるのに、うっかりしていてひっかかる人が多いのです。

 どうしてこんな贈与税という制度ができたかというと、税金に相続税しかなかったとしたら、
国民は生きている聞にどんどん財産を子供達にわけてしまうでしょう。億万長者がいざ死んだというときになって、無一物で相続税をかける財産がなんにもないことだって考えられます。

 そうなってはまずいのです。かたちとしては、生きている聞の財産贈与は、相続税逃れみたいなものだから、生前贈与には贈与税をかけることにしました。当初は財産を贈与した人に課税していましたが、昭和二十九年からは贈与を受けた人に課税することになっています。

 しかし、なんでもかんでも、どんなに小さい額の財産でも贈与税をかけることにしたら、税務署の事務量も大変だし、財産をもらうほうもやっかいです。たとえば父親から息子が一万円の小遣いをもらったら、それで贈与税になるのでは、両者ともたまったものではありません。そこで考えだされたのが、贈与税の基礎控除です。一年間に六十万円は控除するという制度です。

 これはもらう人の立場からの六十万円であって、くれる人の立場からの金績ではありません。父親から六十万円、叔父さんから六十万円、合計百二十万円の財産をもらった場合は、六万五千円の贈与税がかかることになります。こうなるともらうほうとしては、毎年六十万円ずつもらっていれば大丈夫なんだということに気がつきます。これをうまく活用する他に方法はありません。

 この六十万円の額も、現金の場合はよいのですが、株式だとか不動産などだと困ります。額面五十円の上場株式一万二千株で、ちょうど六十万円だから大丈夫だろうと思っていると、大変なまちがいです。そのときの株価が二百五十三円だったとすれば、一二百三万六千円の贈与を受けたことになります。だから、株式や不動産の相続税評価額には注意しなければならないのです。

 なおこの贈与税の基礎控除額は、税法の改定があって何年かすると必ず上がります。財産贈与は気長にやることなのです。