関係会社への無利息融資は一般寄付金科目とされることがある

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関係会社への無利息融資は一般寄付金科目とされることがある
 自分の会社と関係の深い会社へ融資をすることはよくある。融資には利息がつきものである。利 息をとらないと、それだけの経済的利益の提供をしたことになる。だが、その会社をもう一度立ち 直らせようと思って、無利息で貸すということもある。 税務箸が目をつける帳簿や伝票の裏側

 花井鋼材株式会社は完全な同族会社である。この会社が相当数の株式をもっている伊回工業株 式会社は、ここ数年業績があまりよくない。

 花井鋼材は伊国工業へ材料を入れている関係から、伊国工業にとって花井鋼材はつねに債権者 である。五年前の決算期には伊田工業に対する売掛金残高は一千万円台であったのが、次第に膨 張を続け、最近の決算では二千八百万円ぐらいになってしまった。一方、受取手形も六百万円ぐ らいであったのが、とうとう一千万円を超えるにいたった。

 とくに警戒すべき状況は、今期中に期日になった手形に対して、数回にわたって書換えを要求 され、花井鋼材はその都度その手形の支払い期日を延ばされてきたのである。 伊田工業の決算をみると、二期連続して欠損である。花井鋼材はこれは下手すると倒産するか も知れないと踏んだ。そこで、どうしたら伊田工業を立ち直らせることができるか、社長以下の役員を呼んで検討した。協議した結果次のように決めた。

(一)売掛金については、八Oパーセントを六ヵ月間たな上げにすること。
(ニ)花井鋼材は伊田工業に対して、三千万円を経営資金として三年間無利息で貸し付けること。

 花井鋼材は無利息で貸し付けることに対して、抵抗を感じた。なぜならば、通常の場合なら当 然利息をとらなければならないのに、それをとらないということは、その利息相当額の経済的利 益を提供したことになり、これが寄付金と認定され、また、伊田工業のほうもその利息相当額の 受贈益が発生するからである。

 そこで、花井鋼材はどういうことを考えたかというと、三千万円を貸付金とせずに、一千八百 万円と一千二百万円の仮払い金にしておいたのである。起死回生の油を注ぎ込んでやれば、自分 の会社の売掛金も回収できるし、受取手形も現金化できる状態に立ち直れるだろうと考えたの だ。

 仮払い金勘定になっているから、貸付金ではない。伊田工業を救うことは、自社にとっても利 益になるのだから花井鋼材はこれで言い分がとおると考えた。

 税務署は売掛金や受取手形の残高がたくさんあるのに、なぜ、伊国工業に対して三千万円もの 仮払いをしなければならないかに、疑問を持った。伊田工業の経理内容も調べたところ、この三 千万円は事業資金として使われている。金銭消費貸借契約こそしていないが、これは伊田工業にとっては完全に借入金であり、花井鋼材にとっては貸付金とみるより仕方ないと判断した。親会 社の気持ちはわかるがやむをえないことであった。

 本来なら伊田工業から徴すべき二百八十七万五千円の利息相当額は、寄付金と認定され、一般 寄付金としての限度超過額百三十二万三千円は損金不算人となり、伊田工業のほうは二百八十七 万五千円の受贈益に対して課税されるところとなった。