リベートは一度交際費に計上しておけばあとが楽

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リベートは一度交際費に計上しておけばあとが楽
 契約にもとづくリベートは、明らかに販売促進費である。そうでないリベートは交際費に属す たぐ る。機密費も交際費のうちにはいるとされている。ところが、この類いのリベートは、どこに支払 ったのかいえない場合が多い。

 九重重機工業株式会社というブルドーザーなどの重量機械を扱う会社がある。売り込む先は土 うらがね 木建設関係の会社が多い。こういう業界はえてして裏金が横行する。大手の建設会社である柏山 建設株式会社と、ブルドーザーの納入など総額で一億五千万円ばかりの商談が成立した。

 例によってリベートを要求された。支払いの形態が、納品検査終了後の翌月十五日の小切手払 いなら、リベートは八百二十万円、検査終了後百二十日払いの約束手形でよいなら、六百八十万 円というのである。しかも、このリベートに対して領収書は出せない、その上、全額キャッシュ にしてくれというのだ。

 社長の工藤八郎(六十一歳)は、第一線で営業を担当している長男の常務取締役十一郎(三十三歳) から、これについて相談を受けた。いずれにしても出すことは、取引金額も大きいことだし仕方 ないだろう、どちらを選択するかは、十一郎常務にまかせるといった。そこまではいいが、「た だし」がついた。

 昔、こういうリベートを出して、支払い先がいえないばかりに、全額を社長の賞与と認定さ れ、法人税等ばかりでなく、社長個人の所得税までとられ、おまけに加算税も徴収され、なんだ かんだとリベートの額に近い税金をとられたことがある。気をつけるようにと厳命されたのであ る。

 社長の命令に十一郎常務は、いろいろ考えた。基本的には早く売上げを回収したいので、リベ ート八百二十万円の線で進めることにした。五百六十万円は、いろいろな種類の機械の部品材料 費にとけ込ませることにし、残りの二百六十万円は修理費のなかに入れることにした。

 大丈夫だと思っても、税務署の専門家はすぐに見やぶる。調査官は会社での調査はほどほどに して、裏づけのための反面調査に日数をかけた。その結果、部品材料費の五百六十万円と修理費 の二百六十万円については、会社で支払っているという相手先がないことがわかった。執劫に十 一郎常務は追及されたが、頑として口を割らない。ついに、隠ぺい仮装の工作をしたということ で、青色申告は取り消され、八百二十万円は使途不明として役員賞与とされ、これに見合う法人 税等の追徴はもちろんのこと重加算税を本税の三Oパーセントもとられて、父親と同じ失敗を重 ねたのである。この種のリベートは交際費に計上して、信濃性はあとで争うことにしておけば、 隠ぺい仮装にはならずにすんだはずである。