「通常要する費用」なら交際費でなく損金に算入してよい

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「通常要する費用」なら交際費でなく損金に算入してよい
 交際費の範囲は広い、しかし、一面からみると狭い。会社が交際費だと考えて処理しても、交際費でない場合もある。交際政でないと思っていても、交際費のときもあり、この区分には問題が多 い。税務上の交際費とはどういう種類のものなのか。

 岡本建設工業株式会社は、盆と暮れには相当の口数のつけ届けをしなければならない。これが 全部交際費になってしまうので、大変な額になる。そのほかにちょいちょい客を料亭やパーでも てなす費用もこれまた馬鹿にならない。そんなこんなで毎年の決算が終わって確定申告をすると き、損金不算入として課税を受ける交際費はいつも高額だ。その上、昭和五十四年度の税制改正 では、またまた交際費の課税強化ということになった。おかげで損金算入限度額の計算が簡単に なったが、今度は交際費の限度額がぐんと少なくなったのである。

 〈交際費の限度額(一年決算〉

(一)資本金額一千万円以下の会社―四百万円 (ニ)資本金額一千万円超・五千万円以下の会社―三百万円 (三)前記(一)、(ニ)以外の会社―二百万円

 これによると、岡本建設工業は、一年決算で資本金七千万円だから、限度額は二百万円という 大変微々たる金額である。この限度額を超えた部分の金額の九Oパーセントが損金不算入になる のだから、まことに手痛い。

 社長の岡本盛夫(五十七歳〉は、業界の集まりでいままで気がつかなかった話を聞いた。それは カレンダー、手帳、一扇一子といったようなものを作って、得意先に配ったりする費用は、交際費に しなくてもよいということであった。

 岡本社長は総務課長に命じて、うんと豪華なカレンダーをつくらせた。扇子も大丈夫だという きん ので、もっとも大切な得意先の社長四、五人には一本三百万円もする金の扇子を贈ることにし た

 カレンダーはカレンダーでも、時計付きのカレンダーで、 ったのである。 一個二万円はする。これを百個つく

 交際費の限度額が少なくなり、損金不算入になる割合が八五パーセントから九Oパーセントに 大きくなったが、そもそもこれは交際費にならないのだから大丈夫だと、これは全部広告宣伝費 に算入した。

 あにはからんや、税務署の調査でこれらは全部認めないということになった。 と金の扇子だけで、損金にならない金額は次のように莫大な金額になった。

 {(金の扇子1,500万円+時計付きカレンダー200万円)-限度額200万円}×90%=損金不算入額1,350万円

 損金不算入額の約半分は、法人税そのほかでもっていかれてしまうのだ。岡本社長はカレンダ ーなどは交際費にしなくてもよいという話の大事な後段を閲いていなかった。それは「通常要す る費用」なら、という条件があったのだ。