会社の金で息子に車を買ってやると、役員賞与にされることがある

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会社の金で息子に車を買ってやると、役員賞与にされることがある
 個人企業であれ、会社組織であれ、使う資金が会社の業務に関連していてこそ、初めて税務上の 必要経費になり、損金になる。ところが、経営者はときとしてわがままなことをする。そして、納 めなくてもよい税金を余計に納める結果になったりする。

 真野スポーツは、いちおう株式会社組織で経営している。スポーツ・ブ―ムの勢いに乗って、 目下不況知らずの商売である。社長の真野浅夫(四十三歳)は、死んだ親父が社長をしていたとき より、派手に稼ぎまくった。息子の誠一〈十八歳)は、高校を出て浪人をしていた。父親にせがん で自動車の運転免許をとった。大学を卒業し、会社に勤めたら、すぐに必要になるからというの が理由だった。しかし、大学に入ってからでも間に合うから、とにかく大学にはいる勉強をしろ と、父親は反対した。甘いのは母親の市子(四十歳)句である。誠一の言うことをきいてやってくれ とせがんだ。

   案の定、免許をとってしばらくすると、自動車を買ってくれときた。浅夫は、暇があったら会 社の商品運搬用の自動車でも運転しろと言って拒んだ。息子の誠一は会社の景気がよいことをう すうす知っている。母親の応援を得て、外国製のスポーツカーが欲しいとせがんだ。父親は頑強に抵抗したが、母親のいまが一番難しい年ごろだからという泣き落としに屈して、三百五十万 円も会社の会計から払わせてしまった。

 会社は帳簿に乗用自動車として計上し、決算期には減価償却もした。しかも、燃料費や修理費 などの自動車の経費一切を会社の経費から出していた。こういうことは、日本の同族会社の通弊 である。経営者個人と会社との会計を、適当に運用してしまうのである。この歯止めのために、 同族会社のやった行為や計算では、会社の税金の負担を不当に軽減するようなことは認めない と、法人税法ではきめている。

 真野スポーツの外国製スポーツカー購入は、当然これにひっかかった。社長の国産乗用車が あり、商品運搬用の小型自動車が五台もあるところへもってきて、外国製スポーツカーはなん のために必要なのか、会社の業務とどういう関連があるのか、税務署に詳しく調べられた。社長 と経理課長はいろいろ理屈を並べて、会社にとっての必要性を説いたが駄目だった。国産車とち がってスポーツカーでは、調査官に初めから怪しいとにらまれてしまっていたのである。

 その結果、どういうことになったか。第一に購入資金三百五十万円を社長に対する賞与にする かどうかが問題になった。賞与となれば、会社にも税金がかかり、同時に社長個人には所得税が かかる。すると、一度に多額の税金がかかる。そこで、三百五十万円を社長に対する貸付金と し、五年間で返済、利息は年九パーセントの割合で払うことが認められた。社長の賞与に対する所得税は助かったわけである。第二に減価償却費は損金と認められず諜税、第三の燃料費とか修 理費などすでに払っていたものも、会社の損金と認められずこれも課税、同時にその合計綴は社 長の賞与として所得税に対する課税となった。