離婚時の財産分与は課税されないが、不動産の分与は所得税がかかる

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離婚時の財産分与は課税されないが、不動産の分与は所得税がかかる
 財産の贈与を受けることと、財産の分与を受けることとは厳然とちがいます。贈与を受けたときには 贈与税がからんできます。民法では、協議離婚をしたものの一方が、財産の分与を請求することがで きることを規定しています。この規定による分与は贈与ではありません。

 日本の離婚率は年々高くなっています。日本では財産の分与について贈与税がかからないからだ というわけでもないのでしょうが、深刻な問題です。離婚をするときは、たいてい夫のほうが妻でなく なる女性に財産をわけてあげます。協議上の離婚であれば、そのわけてあげる行為を分与といいます。分与 は贈与と本質的にちがうから、贈与税の課税対象にはならない。簡単にいえば分与ならば、財産 をもらっても贈与税がかからないのです。

 このことを利用すれば、たとえば、今年離婚して一千万円の財産を妻に分与し、来年よりを 戻して一緒になり、その次の年にまた一千万円の財産を分与すれば、三年間で贈与税のかからな い財産を二千万円わけてやることもできることになります。こうやって離婚と結婚を繰り返せば、十 年ぐらいの聞に相当の財産をわけてあげることができると考える人もいるでしょうが、実際には無 理です。贈与税を免れるための偽装離婚だと判定されれば、贈与とみなされ贈与税がかかるのです。

 牛山信男(四十八歳〉は浮気の虫がおさまらず、二十年も連れ添った妻の八重(四十二歳〉をかえ りみないことが多くなりました。しかし、ついに八重のほうから家庭裁判所に申し立て、調停が成功、 離婚することになりました。離婚に際して、現在住んでいる家屋敷と当座の生活費を現金で五百万円 を信男は八重に分与することになりました。二人の子供は八重が養育することになり、信男は養育費 として毎月二十万円送ることになりました。信男は承諾し、さっさと愛人とともにマンション暮らし を始めてしまいました。信男は財産の分与には税金がかからないと聞いていたので、これでやれやれ だと思っていました。

 ところが、信男の予想もつかない事態が発生しました。現金五百万円の分与と養育費は問題になら なかったのですが、妻に渡した家屋敷が問題になったのです。これは時価で譲渡があったものとし て、彼は土地家屋の譲渡所得について、所得税の課税をすると、税務署から宣告されたのです。 驚いたのは信男でした。ほとんど洗いざらいの財産を別れた妻にくれてやった上に、税金を自分が納めるなんて夢にも思わなかったのです。こんな惨いことがあってたまるかと食ってかかりましたが駄目でした。

 それにはそれなりの理論があります。家屋を自分が取得したときと、長年住んで離婚 したときとでは、その価値に相当の違いがあります。つまり値上がり益が発生している筈であるとい うのです。その値上がり益を所得として分与する人が税金を払うべきだというのである。