結婚して二十年以上の夫婦間には、うまい贈与の手がある

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結婚して二十年以上の夫婦間には、うまい贈与の手がある
 自分が死んだあと、残された妻が家を追いだされでもしたらかわいそうだといって、住んでいる 家の名義を妻の名義にすると、これは贈与にあたるため、通常の場合は贈与税がかけられます。しかし、二十 年も一緒にいる夫婦の間なら大丈夫です。

 吉井太郎〈五十五歳)は、梅代主十歳)と結婚して二十六年になり、二人の聞には三人の男の子 がいます。いずれも結婚して別居しています。いま住んでいる家は、郊外の閑静な住宅地にあり、土 地が二六0平方メートル(約八十坪)、家屋が九二平方メートル(約二十八坪)あります。

 太郎は自分が死んだあと、妻の梅代が子供たち兄弟の財産相続の争いに巻き込まれて、いま住 んでいる家を追いだされ、落ちついて老後を過ごせるところがなくなったら困ると日ごろ考えて いました。彼は、会社の経理部の税金に詳しい者が教えてくれた方法を使うことにしました。

 婚姻関係が二十年以上の夫婦問で、居住用の財産を贈与したとき、特別な控除として一千万円 の控除ができるという制度です。現在住んでいる家の土地と家屋の相続財産としての評価額 は、調べてもらったら全部で千百万円でした。これを贈与して、土地と家屋を梅代の名義にし ても、いくらも贈与税がかからないことがわかりました。

 贈与を受けた財産額1100万円-(配偶者控除1000万円+基礎控除額600万円)=40万円

 四十万円に対する贈与税は四万円です。「これくらいなら梅代自身で払える。婚姻期間二十年 を遥かに越しているので条件は充たされている。」彼は思い切って土地・家屋ともに妻梅代の名義 にし、翌年、贈与税の申告をすませました。

 この配偶者控除制度の要点は、まず婚姻期間が二十年以上ということです。戸籍に婚姻した と記載された日からの起算になります。だから、内縁関係ではいくら二十年以上でも駄目です。また、 贈与を受ける財産は、次のように限定されています。

 (一)もっぱら居住用に供する土地もしくは土地の上にある権利、もしくは家屋で日本国内にあ るもの。

 つまり、土地の贈与を受けたときや、借地権の贈与を受けたときには、そこに居住用の家屋が ないわけですから、贈与を受けた翌年の三月十五日までに、家屋を建てて現実に住んでいなけ ればならないというわけです。

 (ニ)同居住用不動産を取得するための金銭。

 まるで夫婦別居奨励のような法律ですが、夫から奏であるいは妻から夫へ居住用不動産を取得 するための金銭が贈与されても、一千万円の配偶者控除は適用されるのです。