会社の業務に関連する寄付金は損金算入ができる

昭和の節税対策  > 節税できる費用の範囲  > 会社の業務に関連する寄付金は損金算入ができる

会社の業務に関連する寄付金は損金算入ができる
 寄付金には、全額が会社の損金になるものと、限度額を超えた金額は損金にならないもの、また その中間の試験研究法人等に対する寄付の三種の枠に大別できる。しかし、役員はこの寄付金を、 自由に操作できるところから、問題がおきる。

 株式会社相団組は建設業を営んでいる関係で、あっちこっちから寄付をせまられることが多い。 社長相田吉郎〈四十九歳〉のドラ息子はようやくのことで、某大学の法学部に入学する運びとなっ た。成績がよくないので、入学金のほかに三十万円の特別寄付金を納めることが条件になってい た。学校法人である大学への寄付金であるから、相田は経理課長に命じて、会社から支出させた。

 支出したのは会社の経理にはちがいないが、寄付者は相田個人名である。大学ではちゃんと寄 付金の領収書を発行してくれたので、これは大丈夫だと思った。

 国または地方公共団体に対する寄付金および指定寄付金は、全額が損金になる。大学は教育振 興の機関なので、試験研究法人等の範囲に入り、こういうところへの寄付金は、一般の寄付金の 限度額(後述)とは別枠で、一般寄付金の限度額までは損金にできると考えたのである。もちろん、 これに該当しているときには筋がとおった考え方であり、もちろん法律どおり損金算入ができる。

 <会社の一般寄付金の損金算入限度額の計算式>

 {(所得金額)×2.5/100+(期末資本金額+期末資本積立金額)×2.5/100}×0.5損金算入限度額

 しかし、こういう基本的な規定は、会社が会社の業務に関連して、寄付金を支出した場合にか ぎり適用されるのである。たとえば、私立大学の建築工学の研究所などで、基礎的な工学研究資 料の整備のため、文部省を通じて大蔵省と合議の上、これに関する寄付金は試験研究法人等に対 する寄付金として取扱うという承認を受け、かっ、これに対して株式会社相田組が会社として、 かりに五十万円の寄付をしたとすれば、これは試験研究法人等に対する寄付金として正式に取扱 われるのである。

 つまり、相団組の場合の寄付金は、寄付金の本質的な性格坑違うのである。大学に入る息子の ために親である相田社長個人が支出する寄付金である。本来であるならば、個人の生計費のうち から支出されるべきものであって、会社の業務にはまったく関係のない寄付金なのだ。わが国の 同族会社では、突はこういう事例が非常に多いのである。

 社長の命令一つでどうにでも経費の支出ができる。個人に関連する費用も、いかにも会社業務 に関連しているかのように偽装して支出することは、いともたやすいことである。その結果どう いうことになるかというと、会社の経費として損金になる金額が多くなるから、利益が少なくなり、法人税の負担を不当に減少させることになる。  

 そこで、国税庁は通達を出して、役員などが個人として負担すべきものと認められる寄付金は、 その負担すべきものに対する給与とするとしているのである。この場合は、相田社長個人に対す る賞与となり、法人税も追徴され、相田社長個人は所得税さえも追徴されるわけである。