領収書がない交際費でも状況を詳細に記録しておけば認められる

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領収書がない交際費でも状況を詳細に記録しておけば認められる
 「領収書」は、相手方になにかの支払いをし、相手方が確かに受け取りましたという証拠の書類 である。なかには偽造もある。しかし偽造の場合は電話番号が書いてなかったりするからわかる。 だが、交際費を使って領収書をもらえないことだって実際にはよくあることだ。

 株式会社千野商会は、カメラと写真関係の諸材料の卸販売をしている。社長の千野兵三(四十六 歳〉は、まことに気の小さい男である。それだけに取引先とのつき合いでも、誘われればいやと 言わない。小まめによくつき合う男である。しかも、会社の会計は妻の良江(三十九歳〉が、常務 取締役としてがっちり握っているので、ときには接待に困ることがある。

 まず第一に領収書のない交際費は絶対に出してもらえないのである。その次に困るのは、なじ みの小料理屋やパーなどに客を連れて行って、あとから請求書を送ってもらうと、必ずその晩に 悶着が起こることである。

 「あんたッ。またあの店へ行ったんですか。誰か好きな女でもいるんじゃないの:::」 と良江にギュウギュウやられるのだ。

 なじみの店では、その場で、しかも客の前では代金を請求したりしない。たいてい、あとから 請求してくる習慣になっている。そんなこんなで社長報酬は、いつもすっからかんになってしま う。現金払いが多いからである。気の小さい男にかぎって一杯入ると、つい気が大きくなり、一 軒でやめるつもりが、二軒目、三軒目とはしごになることもある。さりとて役員報酬の増額を要 求しても、良江の反対にあってままならない。

 こういう話は悲劇である。実は日本の税法のどこにも領収書がなければ経費として損金算入を 認めないとは書いてないのである。その点外国の税法にくらべて日本の税法はザル法だともいえ る。

 たしかに支払ったということを立証できる領収書があったに越したことはないが、もらえない ときだってあるものだ。得意先の葬式に香典を三万円包んで行って、会社の交際費にするんだか ら領収書をくれとはいえない。

 領収書を貰えないときは、その交際費が会社の業務にどういう関係をもつのかを明確にし、ど こで誰を接待していくら払ったかを、できるだけ詳しく記録しておくのが一番いい。

 しかし、まちがっても、領収書がないからといって、交際費を仕入勘定だとか、外注費だとか いった他の勘定にもぐり込ませることは避けなければならない。これは隠ぺい仮装したことにな り、青色申告の取り消しの原因になると同時に、重加算税(追徴税額の三Oパーセント〉課税の原因に もなるのである。