利益がたくさん出た同族会社の社長は配当でもらったほうが得

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利益がたくさん出た同族会社の社長は配当でもらったほうが得
 同族会社は会社の支配権が一部の株主にかたよっているところに特色がある。またこれは同族会 社の大きな利点である。だから、利益がたくさんでたとき、それをどう処分するかは、社長が大株 主であれば、自分で自由に裁量できる。

 秋吉権太〈五十八歳〉は敗戦とともに闇屋を始めた。東京都内に住んでいる同窓生相手に始めた 石鹸、化粧品などの製造販売だったが、よく売れた。昭和二十五年に株式会社組織にした。もち ろん、株式の八五パーセントは自分が握っている会社である。

 増資に増資を重ねて、今日では資本金一億一千万円の立派な会社である。秋吉のねらいはすべ て現金収入の仕事ばかりである。小料理屋もやった。そしてフランス料理腐を都内に聞いたの は、つい最近である。会社の資本金は一億一千万円でも、個人の資産は数億円を越すともいわれ ている。この個人資産を形成する過程は、実に級密だった。

 彼は会社から可能なかぎりの社長報酬をとった。過大な役員報酬は損金にしないという法人税 法の規定はあるが、会社は商法によって成り立っている。その商法の定めにしたがって株主総会 できめた報酬についてとやかくいうのは税法の内政干渉だと大威張りで社長報酬をとりまくった。しかし、それでも会社は相当の利益をあげた。

 秋吉はその利益の処分にあたって悩んだことがある。これを配当として処分すべきか、役員賞 与として処分すべきかということである。いろいろ計算をやってみた。 結論としては、利益がでたら配当として処分すべきだということであった。なぜならば、配当 にした場合、それに見合う所得金額についての法人税率がちがうということであった。かりに一 千万円の所得金額を配当にしたときとしないときでは適用される税率が次のようにちがうのであ る(資本金一億円を超える会社の場合)。

 一千万円(配当しない分に対する税率)
 一千万円(配当に宛てた分に対する税率)

 法人税の合計は七百二十万円になる。まったく配当したいと八百四十万円、ここで百二十万円 け違ってくる。また、秋吉個人の所得税にしても役員報酬は給与所得になり、その他に配当がある こ とすれば、自分が八五パーセントの株式を持っているので一千万円のうち八百五十万円は配当と なり、このうち一部は一Oパーセント、他は五パーセントの配当控除という税額控除で、所得税 がぐんと安くなるのである。