夫婦でも社長、副社長の場合、海外渡航費が経費になる手がある

昭和の節税対策  > 節税できる費用の範囲  > 夫婦でも社長、副社長の場合、海外渡航費が経費になる手がある

夫婦でも社長、副社長の場合、海外渡航費が経費になる手がある
 親子が社長、副社長であったり、夫婦が社長、副社長であったりすることはよくある。社長と副 社長が夫婦であって、二人揃って業界観察のために、社員に送られて海外へ飛び立ったはいいが、 この海外渡航授は会社の経費として、損金性があるのかないのか。

 三島器械株式会社は、理容美容器具のメーカーである。創立以来、夫唱婦随というよりH婦唱 夫随M の経営である。といっても、対外的には妻が社長で、・夫が副社長や専務ではおかしいの で、夫が名目上社長となり、妻が副社長という体制をとってきた。

 ときには外国の業界も見ておかなければならないということで、フラソスを皮切りにイタリア そして西ドイツを回り、最後にイギリスに寄って帰国する計画をたてた。あまり会社を空けるわ けにもいかないので、半月の予定ででかけることにした。予算を見積もったらどうしても三百万 円ぐらいはかかる。これは会社の損金になるかならないか。もし、夫婦のうちどっちか一人分し か経費にならないとしたらどうしたらよいだろうかなど、二人は思案に暮れていた。

 税務上では、業務にかかわりのある海外渡航であれば、会社の損金になるといっている。ただ し、観光旅行は駄目だといっている。また、同伴者として随行したものの旅費が経費に認められる場合については、次のようにはっきりと取扱いが決められている。

(一)その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるとき。
(ニ)国際会議へ配偶者を同伴して出席する必要があるとき。
(三)旅行目的達成のために外国語のょくできるもの、または高度の専門的知識を必要とするもの を、どうしても臨時につれてゆく必要があるとき。

 この夫婦はお互いに同伴者みたいなものだが、このどれにも該当しない。 しかし、夫婦がどちらも役員で、海外の業界を視察するために、二人揃って海外渡航をしたと き、どっちか一人分は駄目だという取扱いもない。腹をきめた二人は、まず、取締役会に諮り、 その承認を得、同時に最低限必要な費用の支出も認めてもらった。そして、出発前に綿密な旅行 計画を立てて、それを記録に残した。もちろん、業務にかかわりのある旅行計画であって、観光 を目的とするものではない。かくして、半月の旅行から帰って、確定申告もすませたが、いささ か気掛かりであった。その代わり、同業者の集まりには夫婦揃って出掛けて、視察の報告をこも ごもして、かならずそれを記録にとって保存していた。これで万全である。

 夫婦の場合、どちらか一人は認められないとか、旧婚旅行みたいなものだから会社の経費に認 めないなどということはない。文句をいわれたら裁判でもなんでもやりましょうよと、気の強い 奥さん副社長は、腕まくりして税務署を待っていたが、期待に反してすんなり認められた。