会社所有の土地を役員にあまりに安く払い下げると「役員賞与」になる恐れがある

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会社所有の土地を役員にあまりに安く払い下げると「役員賞与」になる恐れがある
 資産が動けば、税金がついてまわる。これはいまの税法が生きているかぎり、どうしょうもない ことである。だが、同じ資産をめぐる税金問題でも、役員の場合と、従業員である社員の場合とで は、そのかかり方が違うことがあることを忘れてはならない。

 加平産業株式会社は、昔、景気のよいときに郊外に相当の土地を手に入れていた。ここ数年、 景気が悪いのに加えて、業絞も伸び悩んでいた。 前事業年度も、その土地を処分してようやく赤字決算をまぬかれた。三ヵ所に転在する総計四 万平方メートルハ約一万二千坪〉のうち、一ヵ所の一万平方メートル(約三千坪)を、四億五千万円で 士冗ったのである。

 しかし、まだ、処分できる三万平方メートル(約九千坪) の土地があることを知った役員や社員 のなかには、自分の住宅を建てるために、その土地を安く分談してくれという希望者が何人も出 てきた。たしかに残りの三万平方メートルは、買ったときは平均して一平方メートル二千円程度 の安い金額であった。会社の帳簿に載っている価額は、全部で五千七百六十万円である。

 役員や社員の声をむげにもできず、社長の決裁で入000平方メートル(約二千四百坪〉を希望している三十一人の役員と社員に分譲することにした。

 分譲価格は、役員に対しては三・三平方メートルにつき九万円、社員に対しては七万円ときめ た。分談することにした土地は時価にすると三・三平方メートル当たり十三万八千円はする土地 である。東京近辺ではいまやこんな安い土地は夢のようだが、東京から特急で三時間もかかる地 方の小都市では、まだこういうところもある。

 役員のうち三人が一人平均三五0平方メートル(約一O六坪〉を買った。役員全部で一O五0平方 メートルである。会社の売値は全部で二千八百六十二万円であった。取得価額(帳簿価額に等しい) は二百十万円なので、会社は次のように会計処理をした。

(借方)現金預金 2,862万円 (貸方)土地210万円 土地譲渡益 2,652万円


 たっぷり談渡益が出ているので、問題が起こりそうにもなかった。社員の希望者二十八人には 一人平均二四八平方メートル(約七十五坪)を分談した。分譲価絡は三・三平方メートル当たり七 万円だったので、会社は次のように会計処理をした。

(借方)現金預金 1億4,742万3,400円 (貸方)土地1,390万円 土地譲渡益 1億3,352万3,400円


 いずれにしても、相当多額の譲渡益が計上された。

 ところが、役員に対する譲渡分について問題となった。譲渡価額はそのときの時価によらなけ ればならないとして、一千五百四十八万円の譲渡益を追加計上しなければならないことになった。

 従業員のうち二十人はその土地に自分の住宅を建てていたから、別段問題にならなかったが、 残り八人は住宅を建てるつもりで買っておきながら、もうけを上のせして転売したので、やはり 時価との差額の譲渡益を加算され、追加された譲渡益相当額はいずれも、賞与となった。